真っ白なホワイトボード VOL.12
~福祉をサービス業へ、世界への挑戦物語~
第3章「裏切りから、成長へ」
その4「倒産の夢にうなされる」
「オヤジ、とうとうやった。第一号のホームが誕生したんや。俺は福祉の世界に革命を起こすつもりや。オヤジ、みといてくれ」
佐藤は日々の仕事に追われるなか、心の中で瀬川肇に語りかけていた。
佐藤がオヤジとしたう瀬川肇は、日本の福祉界における先駆者である。その瀬川のもとでの実践は、今や佐藤の心臓であり、血と肉になっている。
瀬川のやってきたことこそが、佐藤自身の行動規範になっていた。
しかし、毎日毎日、足を棒のようにして営業し、ビラ巻きに必死に動いているにも関わらず、事態は好転の兆しすら見せない。ホームに入る人が、いっこうに増えてこないのだ。
銀行の支店長である鈴木をして、「ニーズは絶対ある。この事業は必ず成功する」と言わしめたホームの運営である。
「なんでや?」
せっかく実現しかけた夢が、このままでは、萎んでゆく。
多額の借金に押し潰され、眠れない夜が続いた。
「倒産してもた!どうしようもでけへん!」
寝言でそう叫んで、自分の声に驚いて飛び起きる。
持ち前の豪快な笑顔が、佐藤から消えていきつつあった。
そんな佐藤を木村は冷静にみていた。
木村は思う。
福祉の仕事は今まで株式会社でやったところがない。ところが、法律が変わって、福祉法人から民間の会社でもできるようになった。
会社の意義は雇用を生み出すこと、税金を払い社会に貢献すること。
どんな仕事も人の役に立たないものはない。喜んでもらえればお金になる。
「自分の役目は稼ぐことだ」と木村は考えていた。
給料を支払うには一日に何件訪問入浴サービスに行かないといけないとか、ホームの入居率は何%が必要か、しっかりと株式会社としての儲ける仕組みを作らなければならない。そして働く人間こそが幸せになり、その仕事を通じて人々が幸せになっていく。
「自分はその仕組みづくりをやっていこう」
実際、時間をかけて介護をして顧客に満足してもらおうとすれば、稼ぐことと相反することも起こってくる。自分たちがしているのはボランティアではない。数字がすべて、裏切らない。自分は単純に物事を考えて筋道をつけていこう。
佐藤はアイデアマン。どんどん動いてもらおう。それが彼の役目だ。一番輝いている時だ。
ならば、自分はまず食っていくことを考えよう。そのために行動していこう。佐藤に自由に動いてもらうためにも。
佐藤と木村のこの先も続いていく絶妙な距離感と役割の分担。
そして、その二人のもとに志を同じくする人間が集まってきつつあった。
それに比例するように、第一号のホームに入りたいという人が増えてきたのである。
つづく