真っ白なホワイトボード VOL.15

~福祉をサービス業へ、世界への挑戦物語~
第4章「革命」
その3「美しきヘルパー誕生!」

桜田恵美は大阪市内で生まれた。祖父母と一緒に暮らしていたこともあり近所付き合いも多い家庭であったという。祖母に連れられて、昼間早くから近所のお風呂屋さんに出かけ、祖母と同じ老齢の近所の人たちの様々な話を聞いて育った。学生時代はバブル期で何不自由のない華やかな生活が当たり前のように思われた時代を送る。その一方で、世界に目を向けると貧困にあえぐ国があることも見えてきた。

「私と同じ時代を生きている人たちが飢餓でなくなっていく社会とは何だろう」

桜田はいろんな勉強会に参加するようになった。フェアトレードや支援物資を送っているような草の根の運動をしている団体を見つけると、ともに行動せずにはいられないのが桜田恵美である。大学を卒業してすぐに就職した会社の先輩に誘われて教会へ出かけるようになったのもそのころ。キリスト教には興味はなかったが、その協会が「ハンガーゼロ」活動を推進している「日本国際飢餓対策機構」の事務局をしていた縁で、その勉強会に参加するようになり、自ずと礼拝に参加するようになった。その後、自然な形で洗礼を受けることとなる。その時、記念品として渡されたのが『百万人の福音』であり、その記事で紹介されていたのが「日本一小さな有料老人ホーム ロングライフ長居公園Ⅰ号館」であった。

「自分のとりえは丈夫であること。この丈夫な体を精いっぱい使って、神と隣人のために動いていこう!」その決心にふさわしい場所として、「ロングライフ長居公園Ⅰ号館」はあった。


家に帰って連絡を待った。しかし「このままでは不採用になってしまう」その不安に、いてもたってもいられず桜田は思いの丈をぶつけるように手紙を書いた。その手紙は、面接を通していろんなことを教えていただいたお礼に始まり、佐藤たちがやろうとしている高齢者の本当の幸せを目指す福祉サービス業に芯から共感したこと、そして「自分はこう見えてすごく丈夫で、とにかくよく働きますから、必ず会社の役に立ちます」と結んだ。


「桜田さんは、きっと神様に仕える如くお年寄りに仕えられる人だと思いますよ。ぜひ採用しましょう!」桜田の手紙を読んだ正木は採用反対の佐藤に詰め寄った。佐藤には見えていなかったものを、正木は見ていた。彼女は洗礼を受けていると言っていた。洗礼を受けるということは、自らの命を神と隣人に奉仕するということだ。同じクリスチャンとして生きる正木には、桜田恵美が佐藤の思うような単なるか弱い乙女には見えなかった。正木の訴えを聞きながら、同じく手紙を読んだ佐藤も採用反対のかたくなな心を開いていた。心を開けば今まで見えていなかったものが新しく見えてくる。まるで光がさすように。


佐藤は言った。「よし!採用しよう!」  桜田恵美の入社が決まった瞬間であった

つづく

前の記事へ 次の記事へ